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精神衛生と企業防衛、両立図って良き職場に

従業員の精神衛生の問題が全国的に叫ばれている。従業員50人以上規模の企業には産業医制度があるが、4月から全事業所での有給5日義務化も始まり、小規模事業所の企業経営者にとっても無視できない重要な課題となっている。

経営者にとってこの問題は二つの側面を持ち、一つ目は、基準を逸脱した超過勤務や職場のパワハラ等を禁止し従業員の健康に留意する従業員保護という面と、二つ目は、企業の責任範囲内と範囲外を明確に定め、万が一従業員側から訴訟された場合のリスクに備える企業防衛の策定という面である。企業の永続的な経営のためには、経営者はこれら両方を同時に考えておくことが重要である。また、その際に両者を対立する概念として捉えるのではなく、共に守っていくという精神で取り組んでいきたい。高額訴訟の事例を目耳にすると企業防衛の面にのみ目が行きがちだが、まず一つ目(従業員保護)があってこそ健全な職場環境を築くことが出来、二つ目(企業防衛)も守れ、精神衛生と企業防衛を両立できるのだ。

過労による精神疾患を現代人の精神面の弱さやゆとり教育の弊害などに原因を求める風潮も一部あるが、これは間違いだ。同様、ブラック企業が近年増えてきたためであるという論説も見られるがこれも間違いである。過労とブラック労働、これらが表面化するようになったのは、ネット・SNS文化の急速な発展によって内なる声を発しやすくなったためである。これまでもブラック労働はむしろ現在以上に存在しており、長時間労働によって生じた自身のメンタル面の障害を自覚こそせれども、声を上げられず世間の理解も低いままであり続けたのだ。ネット・SNSの普及率の拡大により、精神科・心療内科の敷居が低くなったのである。また、同時に、企業の評判(労働環境の良し悪し)もネット上に流布されてしまう時代となった。経営者は気を使う。

また、我が国の労働生産性の低さに長時間労働の原因を見出す説があるが、これはある一面では正解、またある一面では不正解である。確かに、製品価格が低く抑えられたままの産業構造が長期化していれば、一人の一定時間あたりの付加価値額は抑制され、その分、量で挽回しようとすれば長時間労働となり得る。しかし、一方でかの超一流の広告代理店のような付加価値率が高く高収益の企業でも過労の問題は起こっている。高い生産性を有していても、さらなる利益を求めて過労を強いてしまうという人間の欲があるのだ。数々の犠牲の上に成立した労働法改正(4月)の今年、経営者は通常の仕事に加えてこの問題を考えるためにも時間と頭脳を使わねばならない時代となっている。

2019/06/17 金属産業新聞