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混乱増す経済情勢、公的機関の活用を

景気後退が明確となってきた。長引く米中間の貿易摩擦が国内経済に暗い影を落としているのに加え、日米間でもトランプ米大統領が輸入車や自動車部品を「国家安全保障に対する脅威」と表明するなど通商政策を巡って衝突が避けられない情勢となっている。財務省が先月22日に発表した貿易統計速報(通関ベース)によると4月は前年同月比90・3%減となっており、中でも中国向けの半導体製造装置や船舶が大きく減少する形となっている。同じく貿易統計を見るとねじ類の輸出は昨年11月から今年3月まで5カ月連続で数量・金額共に昨対比において減少を続けており、このうち1月と3月では数量・金額のいずれもが前年比二桁減となるなど厳しい内容となっている。ねじ業界においても同じく半導体分野での需要が減少した一方でいわゆる“箱モノ”が完成するにつれ内装で使用される建築用ねじの需要が高まるなど一部明るい動きも見られるが、総じてみれば停滞感が漂っている。

このような決して明るいとは言えない情勢の中、政府は全国平均の最低賃金を1000円に引き上げる方針を掲げ議論を進めている。賃金の引き上げと言えば先月中頃に某アパレル大手が時給を引き上げた上でアルバイトを2000名採用すると発表して話題になった。応募が殺到したため、発表の翌日には募集を停止したとのことだ。業態や雇用形態等々考慮すべき点は多々あるため安易な比較は避けるべきであるが、今人件費を上げられるだけの余裕がある中小企業はどれだけあるのだろうか。人手不足が深刻化している昨今では「今いる人員を確保するために待遇を改善した」というような話も耳にするようになった。従業員からすれば賃金上昇は歓迎すべき事態だろうが、結果企業が倒れてしまっては元も子もない。目標ありきとならないよう政府は慎重に議論するべきだ。

しかし景況が悪い中でも業務改善や人材育成、設備の導入等を通じた競争力の向上が企業の宿題であり続けることに変わりはない。こうした時こそ公的機関等による支援制度を積極的に活用していきたい。主に中小企業を対象とした補助金制度として広く知られている「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」、通称“もの補助”の公募期間は今月24日までとなっている。今回の公募では「コネクティット・インダストリー」の普及を目的とした新類型(企業間データ活用型)が設けられており、内容としては「事業者間でデータを共有・活用することで生産性を高める高度なプロジェクト」を対象としている。今後は現場と流通、あるいは現場と現場を繋ぐIoT技術の活用が進んでいくのだろうか。採択企業の事例にも注目していきたい。

2019/06/03 金属産業新聞