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天皇陛下と中小企業

天皇陛下が御在位30年を迎えられた。国民の象徴として、また現在の天皇の在り方を常にご自身に問いながらご公務に取り組まれてきたことであろう。皇后陛下とお二人で、国民とともに喜び、また悲しむといった常に国民と寄り添おうとするお姿に感銘を受けてきた。御祝いを申し上げます。

災害が起きる度に被災地に赴くお姿が特に印象に残っているが、毎年のように中小企業をご視察されていたことも忘れたくない。

30年という長い年月ではあるものの、ご視察できる国内の中小企業は限られてしまう。しかし、その中でご視察された中小企業の中に、ねじとばね関連の企業が含まれていたことは、業界として胸を張れることではないだろうか。

東京大田区のトルクレンチメーカーは平成13年に陛下の御視察を受け入れている。同社は御在位30年を記念して、当時の喜びを振り返るための社内行事を3月に開催している。

当時の社長は陛下にトルク管理による個人差の無い締付けが社会の安全の為に役立っていると言った説明や、製品の工程説明、また代表的な製品、あらゆる業界での使用事例を紹介したという。これを受けて陛下は「今後とも社会の安全のために良い製品を作ることを希望します」という言葉を残しており、この言葉は同社の本社や工場に石碑として刻まれているという。

同社はご視察から18年が経過して当時を知らない若い社員を多く抱えている中で、今一度「社会の安全のために良い製品を作る」という使命を想い返すきっかけになればという狙いから、この社内行事を開催したことを明かしている。平成19年にご視察を受けた同じく東京大田区のばねメーカーも陛下から会社の使命に関わるお言葉を贈られたことであろう。

陛下は2月に都内で行われた御在位三十年記念式典にて、ご自身の全ての仕事は「国の組織の同意と支持のもと」で行われたものとし、また、それらを果たしてこられたのは、自身が国の象徴であることに誇りと喜びを持つことのできる「この国の人々の存在」と、長い年月をかけて「日本人がつくり上げてきたこの国の持つ民度のお陰」と述べられている。こうしたお考えのもとで果たしてこられたご公務のひとつに中小企業のご視察があったことを心に刻みたい。

平成の30年間で中小企業を取り巻く社会環境も大きく変化して、企業自身も変化しなければ生き残れない時代になっている。

その一方で、会社の社会的使命とは―。人々の幸せや世界の平和のために会社は貢献できているのか―。平成が終わろうとしているが、今上天皇のご視察を振り返りながらこの問いも考え続けていきたい。

2019/04/01 金属産業新聞