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良禽択木

年末―。年が明ければ「今年の干支」として「戌」に因んだ話がよく聞かれるはずだが、今年の干支だった「酉」は「取り=取る」「飛び立つ」「羽ばたく」に通じる―とよく言われ期待されながら、「鶏」だからか経済全体としてはあまり高くは飛べなかったようだ。酉は鶏限定なのかそれとも鳥類全般なのか?―はともかく、時評子が今年を振り返ってみて思い浮かんだ言葉は人手(労働力)不足による「良禽択木=良禽は木を択ぶ」だ。

本紙アンケート回答や各団体の会合、さらに行政・調査団体等による大規模な集計結果を鑑みるに、アベノミクスから早5年が経ち景気としては当面悪化する見通しが少ないからか業績面での心配は無いようだが、従業員不足、さらには経営者=後継者がいない問題の方が企業の存続の面では身近になってきているようだ。20年以上前から警鐘されてきた少子化問題に対して、有効な対策を打たずに先送りしてきたツケが、直視せざるおえないところまで来た―。といえばそれまでだが、もし来年ベビーブームが起こったとしても、現役世代(労働力)となるには15年以上かかる。採用・就職においては、有能な良禽でなくとも木を択び易い「売り手市場」になった。今後の足りない禽はロボット・ITで補うか、外国人労働者(移民)で補うか?それとも高齢者の定年を引き伸ばすのだろうか?

ロボットとして考えれば、11月29日〜12月2日に東京ビッグサイトで開催の「国際ロボット展」では、前回(2年前)開催時に比べ欧州からの来場者・マスコミが増加したようだが、おそらく背景は労働力不足だ。ロボットが技術的に可能だとしても労働力が足りている国に普及はまだ先で、逆に労働力が足りていない国は必要に迫られて技術を向上させて普及を目指している。

外国人労働者として考えれば、12月に放送された経済ドキュメンタリー番組において、或るアパレル企業が「メイドインジャパン」として製造しているブランド衣服が、下請け会社の外国人実習生受け入れで不当なまでの低賃金により、製造されている実態を明らかにしていた。

そして高齢者、政府は「人生100年時代構想会議」として「リカレント教育(学び直し)」を制度(政策)として推し進める方針だが、若年層の多くが奨学金の返済で困窮する状況の中で、長期的に見て「学び直した高齢者」は、「学ぶ機会を得た場合の現役期間と寿命において先の長い若者」以上に働けるのかが問題だ。

この流れで次の干支「戌」で思い浮かぶ言葉は「狡兔死、走狗烹=狡兎死して、走狗烹らる」だ。モノ・カネ・ヒト―全てが簡単に手に入り、使い捨てできなくなりつつある。多くの禽が寄り付きたくなる木とならなければならない。

2017/12/25 金属産業新聞