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「ねじ」と「デザイン」について考える

本紙11月20日付号で報じた通り、大阪ねじ商社の組合である大阪鋲螺卸商協同組合はこの度ロゴマークを新たに制定した。認知度の向上を目的としたもので、新ロゴマークには今となってはあまり見かけなくなった丸ビスや、組合設立当時(1948年)には国産化されていなかった「すり割り付ねじ」がデザインとして取り入れられるなど組合の長い歴史を感じさせる工夫が散りばめられている。また、ロゴマーク中心にある「大鋲協」の文字は昭和45年に創刊した同組合の広報誌『大鋲協』に第1号から使用されているもので、50年近く紙面を飾ってきた題字がロゴマークに継承された形だ。一見現代風に見える図案の中にも様々な仕掛けや驚きがあり、改めてデザインの力について考えさせられた。デザインとは理想やイメージを可視化する行為であり、言うなれば“旗を掲げる”ようなものではなかろうか。先に挙げた組合ロゴマークは文字通り組鮭となって早速使用されている。締結部品であり装飾性を求められない「ねじ」とデザインは一見相容れないように見えるが、近年ではねじにデザインを取り込むことで独自の路線を進む企業が複数見られる。あるねじメーカーは精密ねじの他に装飾用ねじを製造しており、関係者によると製造を始めた当初は利益に結びつかなかったという。しかし認知されるにつれて意匠性が求められる分野からの問い合わせが増え、ついには事業の柱となるまでに成長したとのことだった。「ねじはあくまでも締結部品であり、意匠性とは無縁である」という常識に対して、日陰者になりがちなねじだからこそ装飾することで光を当てたい、という思いが装飾用ねじに繋がった形だ。別の例として、ねじ商社とゲーム制作会社によるプロジェクトがある。同プロジェクトは子供達に向けて絵本や工作教室(ワークショップ)といったコンテンツを通じてねじ、そしてモノづくりの大切さを伝えている。今年1月にはねじを題材とした絵本を発売しており、普段は鈍色のねじ達が虹色で描かれている。また関係者に話を聞いたところ、プロジェクトの名前にもなっている「虹色」には他業種を繋ぐ意味が込められているとのことだった。ねじに光を当てるコンテンツを発信することで “ねじに対するイメージ”をデザインしていると言えるのではないか。「デザイン」と言うと図案や意匠を思い浮かべがちだがヒトとモノ、ヒトとヒトの相互作用も含まれている。これまで挙げた例はいずれもねじに触れる人間に働きかける力を持っており“ねじそのもの”を超えて「新しいねじ」を提案している。今一度デザインの力を見直してみてはどうだろうか。

2017/12/18 金属産業新聞