ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
金属産業新聞社

文字サイズの変更
ウェブ サイト内

時評

時評 > ねじ

“迷走”した鋼材市況、高まる上伸展開への期待

今年も残すところ40日余り、実質的な企業活動ベースではひと月を切った。今秋までの鋼材市況を振り返ってみると、2016年夏の原料炭の急騰をきっかけに、高炉メーカー各社は主として流通業者向けにトン当たり2万5000円超に及ぶ値上げを実施したものの、需給が伸び悩むなかの価格是正とあって、自動車向けの一部品種を除き、16年11月〜17年2月頃にかけ実勢価格で2割前後の引き上げ幅に止まった。

こうした状況を受け17年度に入り、高炉メーカーは相次いで追加値上げを発表。電炉メーカーも鉄スクラップ価格の上昇ほか、電極など副資材、物流コストの上昇といった要因を挙げ、品種ごとに値上げ交渉を進めてきた。折から、首都圏を含む大都市周辺における再開発事業や東京五輪・パラリンピック関連施設、大型物流倉庫や商業施設、タワーマンション、ホテルといった建築・土木需要の上伸基調から、鋼材価格の引き上げは当初、順調に進むように思われた。

しかし、これに水を差したのが原料炭価格の乱高下と、トヨタ自動車による支給鋼材価格の引き下げ発表である。前者は、16年2月のトン当たり75ドルから16年11月には同300ドル台に上昇、本年1月には同150ドル台に下がり、再び4月中旬には300ドル台に乗せるといったジェットコースターのような展開を見ている。また国内鋼材価格推移における大きな指標である後者は、本年10月〜18年3月期における一次サプライヤー向け集中購買価格を、トン当たり約4000円引き下げたため市況展開に減速感をもたらした。

ただ、一部の鉄鋼メーカーでは既に供給量を絞ることで需給引き締めを図っているとされ、都市部での建築関連需要回復を追い風として「採算性重視」に舵を切るところも散見される。地域的な差こそあれ、直近では構造用鋼が自動車や建機、産業用ロボットなどにおける活況から強含み、自動車向けの冷間圧造用CH鋼線も堅調に推移している。

懸念要素は、神戸製鋼所による製品検査データ改ざん問題や、相次ぐ自動車メーカーにおける完成車の無資格検査問題だ。特に後者では国内工場における一時生産停止にまで発展したことから、構成部品の実需停滞も伝えられている。

従来、自動車向け需要が国内の鋼材相場をけん引するも、建築向け品種では時の為替相場から輸入品の台頭を招来し市況を冷やす展開が続いてきたが、このところの円安傾向で輸入材も入荷難が伝えられ、総じて「需要環境の引き締まり感が強まっており、更なる市況上伸展開も窺える状況」と見る向きは少なくない。それだけに年末年始から本年度末に向け、実需に支えられた底固い市況展開を期待したいところだが…。

2017/11/20 金属産業新聞