ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
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デジタル技術による「ひとづくり」の可能性

「スマート○○」「AI」そして「IoT」―。特に今年に入ってからITに関連した専門用語をよく目にするようになった。連日新たな事例やサービスが話題に上がるも、旧来の技術と混同しているケースも見受けられる。しかしデジタル技術の発展に伴い社会のあり方が変わっているのは事実であり、一時の流行として片づけるのは早計だろう。政府は第四次産業革命を経た産業界のあるべき姿として“Connected Industries”というコンセプトを掲げている。特に日本の高い技術力及び「カイゼン」等に見られる問題解決力をデジタル技術と組み合わせることで人間本位の産業社会を目指していくことが強調されており、その中で「部品・部材産業」における活用方針としては生産最適化、技能継承、新製品の開発等が挙げられている。「新製品」についてねじ及び関連製品に目を向けたならば作業結果を無線送信することでトレーサビリティを提供するボルト・工具類や、荷重負荷を計測するセンサーを内蔵したボルトが既に製品となっている。後者のボルトはドイツの製品であるが、国内においても複数の企業で同じくセンサーにより緩みを検知するボルト・ナットの開発を進める動きが見られる。ところでこれまで挙げた例は「ヒト・モノ・コト」のうちモノ(製品)に対するデジタル技術の活用例であるが、コト、そしてヒトに対する活用の可能性がもっと考えられても良いのではないのだろうか。デジタル技術を活用した製品(ねじ)の高度化=製品開発は容易ではないが、長年ノウハウを培ってきた“ねじを作る”営みに焦点を当てることで付加価値を創出しようとする企業は多い。あるねじメーカーではCADの導入によりこれまでの業務に加え、設計から提案することで付加価値を生み出すと共に自社製品を図面に織り込むことで製品PRの機会として活用している。また別のねじメーカーでは将来の構想として作業者をモニタリングするシステムを導入することで「若手とベテランの作業を視覚化し、比較することで人材育成に活用したい」とのことだった。事象を仮想化するデジタル技術は特に「カン・コツ」を視覚化(数値化)する助けになるだろう。先にインテックス大阪で行われた「関西機械要素技術展」ではVR(拡張現実)を活用した技能継承が紹介されていた。冷間圧造方式によるねじ製造が始まってから半世紀以上が経つ。ねじそのものの革新は難しくとも、ねじを作る方法の革新は十分あり得ると思われる。デジタル技術による「モノづくり」だけではなく「コトづくり」そして「ヒトづくり」に目を向けた時、ねじ業界にはまだまだ多くの豊かな可能性が眠っていると言えるのではないだろうか。

2017/10/23 金属産業新聞