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重要となる“設計・開発”と知財管理

時評子が最近記事にする機会が多いと感じているのは、いわゆる設計・開発≠主業務とする企業だ。一般的に設計・開発部署は、各ねじメーカー・商社内に設けられている。しかし、製造・販売は行わない、または試作品の製造レベルまで行って、量産に至った段階で提携企業に生産を任せる事で、アイデアを商品として特許や意匠登録といった知的財産の管理(知財管理)を業務としている企業も多いのが実情だろう。

消費者の手に届くまでの過程において、「工程」としてみれば、材料調達→製造(ねじ加工)→販売だが、「人の手を介している」としてみれば、設計・開発も材料調達同様に製造前の重要な前段階だ。

ねじは基本原理が確立されているが為に、製造における効率化及び低価格による販売で他社との過当競争に陥りがちで、そこに何か設計上の一工夫を加えて付加価値を持たせた特殊な機能によって、差別化を図り利益を上げる事を目指す企業が多いのは自然な事だ。

或る設計・開発企業≠ゥら取材時に資料を閲覧させてもらうと、今までの世に出回って来た様々な特殊形状の緩み止めねじの原理を研究して、図説付きで分かり易いように一覧表を作成して、自社の開発品と比較してのプレゼンに活用している―と説明された。

設計・開発に特化していけば、知財管理に必要な最小限の事業所及び設備(モノ)・資金(カネ)・従業員(ヒト)のみで身軽になる事で、大きな初期投資をせずとも販売までこぎつけられ、市場の反応を見ながら段階的に生産・販売量、さらにバリエーションを追加・拡大する事も可能だ。

また、ねじ製造・販売の専業で無く業界外、さらに金属加工業・工業に従事していなくとも、アイデア一つで製造業の様相を変える革新の可能性もあり、ひょっとしたら莫大な利益を発生させられる。

その一方で知財管理はますます重要となってくる。技術的に模倣可能・不可能と、法的に模倣可能・不可能かは別問題だ。

一例として特許を取得すると、「既に特許取得済み」と知らせる必要性から特許庁のHP上で公開されるが、閲覧して日本国外において盗用されても、法的な処罰から逃れる者達からは躊躇わず模倣されてしまう。その為に敢えてすぐには特許を取らず、入念に下準備をした上で、日本単独ではなく同時並行で国際的に特許取得する対策もあるとの事だ。

「アイデアも立派な商品・財産」という認識・制度が普及して、設計・開発企業≠ェ活躍できる環境が整わなければ、ねじ・ばね業界だけでなく製造業、ひいては産業全体の活性化の機会を失ってしまう。

2017/10/02 金属産業新聞