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下請取引適正化促進と経営判断の難しさ

政府は先に6月の月例経済報告を発表、「緩やかな回復基調が続いている」とし景気判断を昨年12月以来6カ月ぶりに引き上げた。回復の動きが鈍かった個人消費を始め、設備投資や住宅建設、公共投資など4項目の持ち直しにより、それぞれ個別判断も引き上げられた。国内景気の先行きについても、「緩やかに回復していく」との見方である。

ただ、素材産業関連業種ではレアメタルを筆頭にLNG(液化天然ガス)や、金属加工分野では馴染み深い鉄鋼用原料炭、ニッケル価格などは世界的な需給バランスの崩れから厳しい採算性を強いられている。各社とも設備や拠点網の統廃合、業務の見直し・再編などで収益改善を進めているが、こうした仕入価格の上昇局面において懸念されるのが俗に言う“下請いじめ”だ。

実際、公正取引委員会が「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)違反で指導した件数は12年度比、16年度は3割以上も増加となっており、“強者が弱者を食い物にする”構図はむしろ年々強まっている。こうした状況を受け政府も2016年12月の下請法運用基準改正など関係法令の運用強化に乗り出した。特に所管官庁である経済産業省・中小企業庁では、毎年1月に実施している「発注方式等取引条件改善調査」対象の親事業者で6000社、下請事業者で6万社へ、それぞれ3倍に増やし、法令順守や取引適正化を促進するとしている。

今回は、中小企業にとって資金繰り改善効果が大きいとされる、サプライチェーン全体の資金循環速度についても調査項目に加えることが検討され、自動車や電機、素材関連など各主要業界団体で策定され始めている“自主行動計画”のフォローアップ調査も盛り込まれている。時評子はまだお目にかかっていないが、いわゆる“下請Gメン”の調査・活躍に期待がかかる。

マイナス金利政策の定着により、中小企業における資金調達環境は改善されつつある。しかし同時に、現下のような価格上昇局面の過渡期では価格転嫁するか(出来る)否か、経営判断次第でより一層“格差”も生じ易い。まして本質的な競争相手がモノづくりの力を付けた中国とあっては、経営判断も難しい。

IoTやAIといった次世代技術を生産設備や設計開発、さらには在庫管理・営業分野まで含め業務全体の改革に活かすことが急務ながら、全ての中小企業が“実践”出来る訳ではない。

要は、価格政策面にしろ、次世代技術活用にしろ、自社の現況や置かれた立場を冷静に見極めた上で、どこまで“踏み込めるか”であろう。世界的な構造変化のテンポが早いだけに、各々の“決断”もスピーディさが求められる難題である。

2017/07/03 金属産業新聞