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性能・機能評価と重視される情報発信機能

前号の本紙5月29日付(第3796号「ねじの日」特集)では、“東京2020”を控え急速に進む都心の再開発・建設ラッシュを中心に、ファスナー製品の需要動向やその進化の一端を皆様にお伝えした。近年大規模化する建築物は構造体である以上、また人命保護の観点からも、ねじ単体はもとより構成ユニット部品として総合的な性能・機能評価は欠かせない。

ある自動車メーカーでは、かかる負荷を部品単位で把握し、大事に至る前に故障や不具合の予兆を検知することで、早めの修理や点検を促す取り組みが行われている。エンジンや変速機など構成部品の稼働状況を遠隔で監視することにより、中古車になった場合の査定精度を高められるだけでなく、部品ごとに廃棄か再利用かなど資源を有効活用できる仕組みだ。また1台ごとのライフサイクルの把握で、アフターサービスの質的向上も期待できる。

鉄道分野においても保守点検に人手をかけず、いかに自動化するかをテーマに各社とも技術開発に力を入れている。特に営業距離で格段に長いJRでは各地で相次ぐ地震対策の一環もあり、新幹線軌道では既に自動検査装置が開発されている。従来はレール高さの差や距離を手押し車型測定器により、ボルトの緩みを打音や目視で検査していくが、探傷車輌床下にセンサーを搭載し走行中に超音波で検査する。またレール内側に平行して敷設する脱線防止ガードにより、レールと一体化した文字通り“構造体”として経年変化や異常などをチェックするシステムも実用化されている。

本稿で採り上げること自体はばかれるが、殺傷能力を高めるため手製爆発物に同梱されるねじ・ボルト類は論外としても、今更ながら工業用ファスナー製品の果たす役割は大きく、インフラだけでなく極めて専門的かつ限定的な領域においても、不可欠な機械要素部品であり基礎部品であることは論を待たない。それだけにメーカー各社は、締結部品本来の機能性を高める取り組みはもとより、軽量化や耐食性・作業性向上ほか、様々な付加機能アプローチによる商品開発を続けている。

ボルトにICタグを埋め込み、1本ごとに締め付け管理を可能にする技術は既に実用化されている。物理的な移動量や音・光・圧力・温度など様々な情報を獲得するセンシング技術の進歩は著しい。IoT(モノのインターネット)の進展に伴い、今後はこうした締結部品単体や締結部品を組み込んだ構成ユニットそのものの“情報発信”機能も重視されよう。囲碁や将棋で話題となるAI(人工知能)の搭載は“夢物語”にしても、防犯目的で超小型のカメラを組み込んだボルトなどは近い将来実用化されるかも知れない。

2017/06/05 金属産業新聞