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安全性とその対価、エネルギーコスト上昇の懸念

先月下旬、関西電力の高浜原子力発電所(福井県)3、4号機の大津地裁による運転差し止め仮処分決定が、大阪地裁による再稼働容認決定で覆された。東日本大震災の教訓を受け、安全対策が厳しくなったとされる原発の新規制基準に対応し「安全性は確保されている」との判断である。元々、関西地区は原子力発電のウエイトが高い分、他地域に比べ電力料金が割安だったことや、4月からの電力自由化を控えガスを始めとする他エネルギー事業分野からの参入もあり、「競争原理が安全優先に勝った」と見る向きは少なくない。

相前後して海外の原発事業の巨額損失で経営危機に陥った東芝が、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請を決めた。いずれも6年前と同じ3月の“出来事”としては皮肉な巡り合わせだが、他方、福島原発の廃炉作業では同社を始めとする重工関連原発各社の技術抜きには何も進められないことも事実である。

重工関連や鉄鋼大手各社による安全への取り組みは、1970年代から提唱され活動が繰り広げられてきたTPM(全員参加の生産保全=災害・不良・故障ゼロを狙いに、徹底したロス・無駄を排除し生産効率を高めていく手法)を引き合いに出すまでもなく、長い伝統を持つが、どちらかと言うと最終的な「生産効率を高めていく」ことに重点が置かれてきた。この点では、安全が企業の収益や価値向上に繋がり、社会的評価を得られるような仕組み作りも必要になってくる。

冒頭で触れたエネルギー関連業種では、大手電力10社が再生可能エネルギーの普及を促す制度の負担金増などから、大手都市ガス4社がLNG(液化天然ガス)価格の上昇などにより、いずれも5月から一斉に料金値上げを打ち出している。これら一連のエネルギーコストの上昇は一般家庭のみならず、国内各産業界にとっても大きな負担となるだけに、安全性とその対価についての議論は避けられそうにない。

人間は、ともすると過去の経験則に照らし合わせ判断を誤る。たとえそれが膨大な量の経験値であったとしてもパーフェクトではない。事故(不良)率を限りなくゼロに近付けたとしても、そこに“希望的観測”が介在することで事故や不良は起こり得る。

こうしたことから経済産業省や厚生労働省は、安全対策について官民協議会を立ち上げ、現場安全教育の徹底や統一基準による客観的なリスク評価、老朽化した設備への安全対策などを検討している。

安全に“絶対”がないことは過去の歴史が証明している。「ご安全に!」という言葉を単なる挨拶にしないためにも、日頃からの意識改革や取り組みは欠かせない。

2017/04/10 金属産業新聞