ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
金属産業新聞社

文字サイズの変更
ウェブ サイト内

時評

時評 > ねじ

トランプ政権の意図?、“したたか”外交への期待

連日、“黒田バズーカ”が比べものにならない“トランプ砲”の強力ぶりに、世界中が翻弄されている。正式就任から実質3週間しか経たないが、現状認識の欠如や閣僚内の摺り合わせが無いとされるまま矢継ぎ早に打ち出される“口撃”や大統領令には、大国の大統領というよりむしろ“モグラ叩きに熱中する裸の王様”の感すらある。

その矛先は移民やTPP(環太平洋経済連携協定)、NAFTA(北米自由貿易協定)、為替、日系企業と多岐にわたる。現状は何れもが複雑に絡み合う問題だが、“アメリカ・ファースト”を実現するためなら強硬手段も辞さないスタンスのようだ。為替では、中国とともに「通貨安を誘導している」国として日本も批判対象となった。仮に日銀による外国為替市場介入を引き合いにした発言なら、日本は5年3カ月前の2011年11月以来介入を行っておらず、“的外れ”以外の何物でもない。

しかし移民問題は、テロなど過激な行動に出ない限り基本的に思想・心情の自由を認め、国籍・宗派を問わず受け入れてきた国だけに疑問視する向きは多い。農業やサービス業など比較的単純労働を必要とする業種にとって、労働力としての移民の存在は大きいハズ。特にITや自動車、食品など様々な分野の多国籍企業が君臨する米国の場合、多様な人種・人材で支えられており、難民・移民の一時受け入れ停止や凍結などを命じる大統領令への不支持表明が出されたのは当然の帰結である。

ただ米国では、製造業を中心に行き過ぎた海外移転への反省から、薬品・化学といった一部業種で国内回帰も数年前から始まっており、トランプ大統領の一連の過激発言の裏にはこうした傾向を加速させようとする意図もあろう。また一方で、労働集約型産業におけるIoT(モノのインターネット)やロボット、さらにはAI(人工知能)化の進展は目覚ましく、同時に生じるであろう少人化・無人化の展開次第では“受け入れ移民のオーバーフロー”が先行き懸念されることも事実だ。

本当に“裸の王様”なのか、意図的に対立軸を作った上で自らを優位なポジションに置き、したたかな駆け引き・交渉術を駆使するビジネスマンなのか、後者の見解を持つ識者は多いものの、今しばらく推移を見守るしかない。

仮に後者なら、安倍政権にも米国を上回る“したたか”な外交を望みたい。交渉の“スタートライン”では既に遅れをとっている感が否めないだけに、日本政府や日系企業も、米国議会におけるロビー活動までは難しいとしても、新聞を始めメディアに意見広告するなど、もっと積極的なアピールを展開するべきではないだろうか。(大統領の)嫌いなメディアを味方に付けて…。

2017/02/13 金属産業新聞