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「利益ゼロ案件」解消へ、製販で取組みを

関東圏でメーカーが集積している埼玉エリアでは、昨年後半から自動車メーカーの新車種の案件で受注が伸びたり、今年に入り新規案件が立て続けに決まっているというメーカーも一部聞かれるが、昨年は全体的にみると受注が振るわなかったメーカーが多い。

埼玉エリアのメーカーは、特殊品を得意とする小規模メーカーが多くを占めている。もし東西で昨年の景況に温度差があったとするならば、このエリア特有の性質が関係していると考える。メーカー各社を聞くと、製造原価とほぼ同様、またはそれすら満たしていないような案件を抱えている企業が多い。ここでは「利益ゼロ案件」と呼ぼう。利益ゼロ案件には、(1)その企業が昔から当時の値段のままでずっと受注を継続している案件(2)利益の出る案件を獲得するために、やむを得ず抱き合わせで受注している案件(3)利益が出ていないことに気づいていない案件―などがある。

(1)は創業当時からずっと続いていて経営者が世代交代してもユーザーとの関係上、なかなか解消することができない案件だ。(2)の問題は、利益の出るA案件を獲得するために利益のないB案件も合わせて受注したが、A案件の受注は長く続かず、B案件のみが残るようなケースだ。これはライフサイクルの短い少量多品種化が進んできたことにより顕在化してきたと思われる。(3)はいわゆるどんぶり勘定″で行われてしまうケースだけではなく、昨今の材料費や人件費、配送コストの値上がりにより利益が出ていないことに気づかないケースがある。特に少量多品種の多くの案件を抱える企業は、細かいコスト増に基づいた単価の変更を管理上、把握し切れなくなっている。ギリギリの利益ではなく、こうしたコスト増を想定した利益率のマージンを設定しておく必要がある。コスト増に応じて見積額の決定、現在抱える受注案件の料金変更を一括で行い管理できるシステムも必要だ。

上記のような利益ゼロ案件は、製造業というビジネスの性質上、昔から存在するものであり一部やむを得ないものでもある。また以前は、これを補う量のある案件をこなせれば大きな問題ではなかった。しかし少量多品種化による受注案件のライフサイクルが短くなっていること、材料費をはじめとした製造コストが上がっていることにより、こうした案件がより足かせになってきている。こうした利益ゼロ案件の問題は埼玉エリアに限った話ではないが、特殊品の小規模メーカーが多いエリアを皮切りに顕在化し始めてきているという事実がある。利益ゼロ案件の解消、またこうした案件を解消しても他メーカーが獲得してしまう負の連鎖を断ち切らなければ、業界全体が苦しむことになる。製販の業界が共同で、いよいよこの問題解消に向けて取り組んで欲しい。

2017/02/06 金属産業新聞