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ねじにも名誉回復を!

11月に薬物使用の疑いで2度目の逮捕となった、音楽アーティストのASKA氏が12月19日に嫌疑不十分で不起訴処分となり釈放された。今回逮捕された際はメディアが自宅に多数押し掛け、不法侵入された上に、乗用車に器物破損の被害があったが、これらの被害は誰が補償するのであろうか?

法治国家においては「疑わしきは罰せず」なはずだが、この日本では逮捕(もしくは確保)されると、重要参考人=被疑者=容疑者=被告=受刑者…とほぼ同義で見なされかねない。身の潔白が証明されても、それに対する損失補填や名誉回復というアフターフォローがなされた話はそうそう聞かない。

名誉回復が不十分…ねじ・ばねをはじめとした製造業においても、製品単品、もしくはそれらを部品として使用した製品自体で事故が起きた場合もよく有る事だ。

平成6年には製造物責任法(PL法)が施行されたが、本来あるはずの現場における「作ったものには責任を持つ」意識が、社会的に改めて法律・制度として明文化された契機だったのではないかと今では思えてくる。

しかし、ねじの場合は部品同士の接合(締結)において初めて価値を生み出す存在。大概は構造上の弱い部分となりやすい所同士を接合しているのだから、強い負荷が掛かっているのは当然であり、脱落もしくは破断により、製品が破損して事故が起こった際に、製品全体の設計・構造として問題だった可能性もある中で、多くの場合は事故原因の候補と真っ先に上げられる。チームプレーのスポーツで負けた際に、重要なポジションを任され苦労している選手(ねじ)一人にチームの全体の責任を押し付けられるような構図だ。

また、昨今のねじ業界では不良品発生率を限りなくゼロに近づけるようユーザーからのハードルは上がる一方で、メーカー・商社ともに品質管理・検査体制の確立・向上に努めているが、ねじ業者から出荷されて手を離れて以降、現場で正しい使用方法を実践していなければ、設計・開発・製造、さらに商社として商品知識を持った人達は「事故が起こっても責任を負いかねない」と言いたくなるだろう。

平成24年の、笹子トンネルの天井板落下による崩落事故でも、発生当初は「アンカーボルト(自体)が原因」と推測の範囲で声高に叫ばれていたが、半年以上過ぎて作成された調査報告書では、天井板を吊る接着系アンカーを含めた構造部の設計・施工・維持管理の問題点が指摘されている。しかし今この瞬間に笹子トンネルを通過しているねじ業界以外の一般人≠ヘ「原因はアンカーボルト」と思いこんで走行しているかもしれない。

2016/12/28 金属産業新聞