ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
金属産業新聞社

文字サイズの変更
ウェブ サイト内

時評

時評 > ねじ

「トランプショック」の波紋

“世紀の”“異端の”番狂わせ、英国に続くポピュリズムの台頭!?、“パンドラの箱”を開けた米国、超大国に走る激震、歴史的な転換−11月10日付一般紙の朝刊を始め放送メディアは、いずれも大々的に「トランプショック」を報じた。一般投票の得票数では僅差でトランプ氏を上回ったクリントン氏だったが、州ごとのオールオアナッシングによる選挙人獲得制度では敗れた。

表現や立場こそ異なるが米国は8年ぶりに再び“チェンジ”を選択、しかし結果は大国を二分するものとなった。それだけ人種や年代・学歴別、さらには産業別の人口構成など米国における社会構造が従来と比べ変化していた証左であり、クリントン陣営を始め米国メディアも経済格差に困窮する弱者の憤りを読み違えていたようだ。

ともあれ米国と密接な“同盟”関係にある日本国内では、早くも在日米軍の駐留経費負担増−外交・日米安保体制や、環太平洋連携協定(TPP)の合意破棄など保護主義経済による影響が強く懸念されている。後者に関しては「トランプショック」で一時的に急激な円高・株安が進んだが、僅か1日で円安にシフト、日経平均も1000円以上の上げ幅となる株高を招来、市場関係者をして「まるでジェットコースター」と言わしめたほどの“V字回復”ながら不安定な展開に至った。トランプ氏も一転、翌日の勝利演説では過激な主張を封印、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」こそ揺るぎないものの、国内のインフラ整備による雇用改善や関係国との連携を訴えた。

元々08年のリーマン・ショックで大きな打撃を受けた米国経済だが、先進国ではいち早く回復を遂げた。ただ、移民労働者の増加により賃金の上昇ペースは鈍く貧富の差も拡大し、オバマ政権下では共和党が多数を占める議会との対立で幾度も債務不履行(デフォルト)に陥るなど不安定な経済運営だった。こうしたことから「強い米国経済」を打ち出したトランプ氏を“選択”したのは当然の成り行きとも言える。

保護主義経済や米国の内向き志向が、自国のみならず世界経済に停滞をもたらすであろうことは既に国内外の識者が論破、警鐘を鳴らしているので言及を避けるが、問題は一連の「ショック」の影響がいつまで続くのかである。

新大統領の正式就任まで60日を切った現在(本稿掲載時)、安倍首相も早期の接触を図るべくアプローチしているが、最低でも1期目の4年間は日本経済も何らか“翻弄”されることは覚悟しておかなければならない。結果的に1985年のプラザ合意に至った“レーガノミクス”の再来も叫ばれるなか、当面は“アベノミクス”を掲げる安倍首相の外交手腕に期待したいところだが…。

2016/11/21 金属産業新聞