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低炭素社会の実現と中小企業、パリ協定批准を巡る動き

最近、産業界で大きく採り上げられたニュースの中に、トヨタ自動車とスズキの提携発表がある。エコカーや自動運転など広範かつ多種多様な先進技術の開発を急務とするだけに、その成り行きが注目される。ともに日本を代表する自動車メーカーとあって“ティア・ワン”と呼ばれる一次下請けユニット供給メーカーを始め、産業の裾野を構成している中小企業はまさに星の数ほどある。

ただ中小企業庁の調べによると、1986年に全国で約87万あった事業所は、2006年には約55万と急減、以降も下落傾向に歯止めがかからず、2012年には約49万となっている。個人・企業を問わず“格差社会”と言われるように、単なる“自助努力”だけでは克服し難い状況は日増しにその難度が高くなっていることも事実だ。

先の提携でキーワードは“環境”や“安全”、“情報技術”など。特に“環境”では、折から地球温暖化対策に向けた国際的な枠組み「パリ協定」が11月4日に発効する。昨年12月に採択された同協定は、産業革命以前からの気温上昇を2度Cに抑え、可能な限り1・5度C未満とする目標を世界が“共有”するという。

かつて先進国だけが削減義務を負った京都議定書は米国が途中離脱するなど難航したが、パリ協定は世界196カ国・地域が参加、55カ国が批准かつ温室効果ガスの総排出量の55%以上をカバーすることになれば30日後に発効する。

既に9月上旬、ハリケーンを始めとする異常気象が相次いだせいか米中が揃って批准、欧州連合(EU)も域内各国の手続きを待たず批准に至った。しかし臨時国会で審議予定だった日本は、環太平洋連携協定(TPP)関連法案の審議を優先したため“出遅れ”てしまっている。

来月上旬にモロッコで始まる国連気候変動枠組み条約の第22回締約国会議(COP22)では、批准国を中心に具体的な運用ルール作りが始動する。何れも自国に有利なルールを主張するとみられるだけに、日本は低炭素ビジネスの国際競争から取り残される懸念も危惧されている。

欧米の巨大企業では近い将来、事業で使う電力全てを再生可能エネルギーで賄うと早くも表明している。日本でも自動車や電機関連の大手メーカーが“環境負荷ゼロ”や二酸化炭素(CO2)排出量の大幅削減を打ち出すところも出てきているが、問題は下請け中小企業も巻き込まなければ本来の環境負荷低減が実現できない点にある。

もとより中小企業でも、近年は環境対策に万全を期しているところも少なくないが、その“対応レベル”には自ずと差がある。パリ協定の批准は急がれるものの、これにより中小企業“選別”の理由付けにはしてほしくないと願うばかりだ。

2016/10/24 金属産業新聞