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期待できない小手先の景気刺激策

9月に入って暑さも落ち着きを見せつつあるが、時評子としては昨年から実施されている「ゆう活」の成果が気になっている。以前から行政が提唱していた、日照時間の長い夏に時計の時間設定自体を前倒しにする「サマータイム(夏時間)」と違い、「ゆう活」では始業時間・終業時間の設定を前倒しにして、「仕事を早めに始めて、早めに終え、そして生まれた夕方の時間を有効に使う」事がコンセプト。照明等のコスト・環境の観点だけでなく、広い意味では多様な働き方の推進や終業時間後の余暇を楽しめるようにして消費活動の促進を目指している。しかし昨年「ゆう活」を実行した中央省庁では国会運営に合わせての業務が多く、国家公務員は議事進行が遅れて待機したり、さらに準備に追われたりと、「早めに始めて遅く終える」事態となっている。また、民間企業からも大きな成功例を聞いていない。

さらに今年からは毎月最終金曜日は15時を終業時間とする「プレミアムフライデー」、都市部の若者が休暇期間を使って働く制度「ふるさとワーキングホリデー」も提案されている。「プレミアムフライデー」を実行すれば、確かに給料日は月末の企業が多く、手持ちの金銭が多ければ自ずと財布の紐も緩むのは分かるが、月末業務が忙しい企業も多く実行は現実的でない。

「ふるさとワーキングホリデー」に対しては、時評子も初めて聞いた時「ホリデー(休暇)にワーキング(労働)?江戸時代の旧里帰農令・人返しの法や中国の文化大革命時の上山下郷運動(下放)?」と思ってしまったが、そもそも休暇に労働するにしてもなぜ地方でなければならないのか?政党の支持基盤は自民党は地方・農村部、民進党は中央・都市部が多いといわれているが、与党は「中央に依存しない地域活性化」と掲げながら矛盾にあふれている。

行政としては消費を促進して経済の活性化を図りたいのは分かるが、少子高齢化やそれに伴う年金問題、あらゆる分野の産業の停滞等で「先が見えない不安感で消費を控える」背景や根本的な問題を解決しない限り、小手先の景気刺激策だけで「無い袖は振れないし、振る時間も無く、振る気も湧かない」のが消費者の現状だろう。

アベノミクスが起きてから、多くの統計上の数字では以前ほど景気は悪くはなってはいない。しかし民間、特に中小企業や消費者が「景気が良くなった」とあまり感じていないのが実情だ。物価が上がっても比例して収入も上がらなければ、相対的には経営も家計もきつくなってしまう。景気を国の経済の体調とするならば、アベノミクスは現段階までは対処療法・救急措置としては正解だろうが、医者に掛からず元気に生活できる体力づくり・体質改善≠ノはほど遠い。

2016/09/06 金属産業新聞