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円高を反映したGDP、大型経済対策への期待

内閣府が先に発表した2016年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)速報値によると、前期比年率換算で0.2%増と僅かに2四半期連続のプラスとなったものの、ほぼ横ばいの結果となった。マイナス金利導入に伴う住宅金利低下の影響により住宅投資こそ増加したが、停滞する個人消費に加え、世界経済の不透明感から企業の設備投資が同0.4%減と2四半期連続のマイナスを記録した。輸出も1ドル=109円台(4月)〜同105円台(6月)に至る円高により、前期比年率換算で1.5%減と低成長を余儀なくされた。

こうした見通しを受け、政府は28兆円超に及ぶ経済対策を打ち出したが、早くもその効果という意味では懐疑的な見方が強まっている。GDPの約6割を占める個人消費の喚起策として、雇用保険料の引き下げやプレミアム(特典)付き商品券や旅行券の発行などを行う見通しだが従来の“バラまき”同様、大きな底上げ効果は期待できない。

他方、同一労働同一賃金の実現や長時間労働の是正、さらには保育・介護支援、給付型奨学金制度の創設など中長期にわたる労働環境整備策は、将来的な産業構造・働き方変革という意味において意義深い。

ただ、産業界から注目されているのは「21世紀型インフラ整備」であろう。最大8年前倒しとなるリニア中央新幹線(45年に予定する東京―大阪間の全線開業)を筆頭に、訪日外国人旅行者増や農産物の輸出促進、高度IoT活用に向けた技術開発などの拠点整備である。これらも従来の“ハコもの”構築だけにとどまらない費用対効果の見極めと検証が必要になることは論を待たないが、2020年の東京オリンピック開催を控え、未来への成長に資する投資の役割を担う点で評価されよう。

とりわけ過去最高水準とされる企業収益にあって、内外需要の伸び悩みから今ひとつ力強さを欠く設備投資も、一層の収益性向上による国際競争力強化や今後の成長性を維持する投資は不可欠である。別の観点からすれば、企業の設備投資は雇用環境改善の効果も期待できる。

問題はその財源で、財政投融資を活用しても4年ぶりの追加国債発行に頼らざるを得ない。日銀によるマイナス金利導入に伴う“効果”も限定的とされる現在、税収依存の成長シナリオからの脱却は急務だ。

前記GDPの関連で言えば、7〜9月期はさらに世界経済の不透明感が増し、経済活動の停滞が予想されている。政府には、そろそろ“自ら身を切る”歳出削減に踏み込んだ財政再建と、産業界における新規参入やイノベーションを促す規制緩和、一層の投資促進策など、弾力的かつ持続的な財政運営への転換が求められていることは間違いない。

2016/08/29 金属産業新聞