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工業系人材の確保は安全保障に不可欠

理科系・工業系人材の不足、建設現場の作業従事者の不足、製造業の工場従事者の不足が叫ばれている。これが続くようなら、第二次産業の発展にとって危うい事態であるばかりか、国の安全保障にとっても危機というべきである。国防上、製造業の存在は食糧の確保と並んで重要だ。有事となった際、既に製造業が衰退していたとなれば、その間国力を保持する事など出来ぬであろう。

日本では重工業を中心とする第二次産業が言わば先頭車両として、戦後の復興を牽引してきた。いくら第三次産業の興隆によって、ファッション産業やIT産業が煌びやかなものとしてもてはやされるようになった時代でも、服飾の製造販売や通信サービスにおいても製造設備や機器、建築物、公共インフラなどといった基礎となる土台は、製造業無しには成立しない。そして、その製造業を支えているのは、熟練した技能を有した現場の労働者たちだ。いざという時にもかかわらず国内での増産能力と供給能力にたやすく限界が生じるならば、そればまるで食糧の供給が途絶えるのと同様の事態である。

ここのところ高校卒業生の就職率を見てみると既に就職率は回復し、リーマンショック前水準どころか、バブル崩壊前の水準にまで回復している。ところがどうであろうか。中小企業の実際の求人に対し、理系・工業系人材の供給が潤沢であるとは決して言えないのではないか。

長期的に見れば少子化と婚姻率の低下の影響が大きい。これは必然的に労働者人口の減少と工員の高齢化を招く。現在、出生数は100万人。これを40歳の人口170万人と比較すると実に70万人の開きがある。これではどんなに就職率が改善されても人材不足を避けることは出来ない。婚姻率を上げるには、拡大した非正規職員の給与格差の改善、待機児童問題など、対策が求められる。なお時折、学生の理科系離れといった指摘がなされる事があるが、長期の推移を見る限り、文科系と理科系の比率に関しては顕著な変化は見られない。だが、人口減の中で理系人材を増やすには少子化対策と並行して理科系進学率をこれまでよりも上昇させる必要があるのは確かである。

71年前、玉音放送が流されたこの日復興は始まった。繁栄をもたらしたのは供給される豊富な労働力であった。必要なだけの人材が集まらぬのでは国家の安全は危うい。工業を核としない国が金融国家としてGDPを押し上げている事例が見られるが、経済的にはEU圏、軍事的にはNATOに守られているから出来るのであり、日本は事情が異なる。どうしても自前の工業力が必要なのだ。それゆえ理科系の労働力人口の確保が重要となるのである。

2016/08/15 金属産業新聞