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サービスを売る製造業になろう、無償で提供していないか

モノを販売するのではなくモノをサービスとして提供して利益を得る―。モノづくりの製造業でこうした考え方が広まりつつある。

モノが溢れる先進国の社会では、製品(モノ)を売るだけでは、そのものの差別化が難しいためモノと組み合わせたサービス、またサービスそのものを販売するというビジネスモデルが発展してきた。

企業は顧客に「価値」を提供して利益を得るという本来の考え方に立ち帰れば、販売するものに価値があれば、それは実体の有無に関わらず需要がありビジネスになる。商品がファスナーの場合、顧客はファスナーそのものではなく「モノを締結する機能」を買っているという考え方が成り立つ。

工業製品の代表例とも言えるような「ねじ」。単純に量と低コストだけを求められるものは海外品が担うようになり、それ以外の例えば少量多品種が求められる場では「付加価値を生み出す」という言葉が以前から使われてきたが、これも製品そのものの機能と考えるのではなく「製品+サービス」といった包括的な価値の提供を意味すると考えるべきであろう。製品だけでは差別化が難しい時代、競争力を高めるためにも業界はサービスの要素に力を入れる必要があるのではないだろうか。

製造業で言うサービスは、製品を購入してくれたユーザーを対象にした「アフターサービス」が代表例だ。しかし製品を購入する前、または購入するのと同時に提供されるサービスも生み出せるはずだ。

ある精密ねじメーカーでは、インターネットを介した「BtoC」型の取引を行っている。ホームセンターに売っていない精密ねじを手軽に少量で購入できることもあり、個人客からの注文も多い。こうした個人客の中には紛失してしまったねじを購入したいという問い合わせもあり同社では、自社設備を生かした「プロの測定」により適正なサイズや材質を割り出し数本単位で製品を提供している。ねじ数本だけでは僅かな売上げだ。同社ではこの測定による適正な製品を提案する「診断料」というサービスに価値を見出しておりビジネスモデルとして確立していこうと模索している。

サービスをIoTと組み合わせて考えるとさらに視野は広がりそうだ。ファスナーを販売した後にそのファスナーの緩みを監視する保守サービスなども生まれるかもしれない。

当たり前のようで実は価値のあるサービスを古くからの慣例で無償で提供してしまっているようなケースもある。本当にそのサービスは無償で良いのか。改めて見直すことも必要だろう。

2016/07/25 金属産業新聞