ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
金属産業新聞社

文字サイズの変更
ウェブ サイト内

時評

時評 > ねじ

購買を強化して自社はスリム化、協力会という大きな存在

生産拠点は人件費の安い海外に、加工幅を広げるために設備を拡張する、外注になるべく頼らず内製化を進める、といった動きがある一方で、国内生産をベースにして、自社の生産拠点をスリム化、さらに購買部門を強化しようと取り組む企業がある。

こうした施策を進めているのは東北地域に自動車部品事業の生産拠点をもつメーカーだ。購買部門を初めて立ち上げたのはリーマンショック後。これまでも協力会で組織する自社独自のネットワークを持っていたが、少量多品種化の流れを受けて、量産品は自社で生産して、少量品や二次加工・特殊品といった製品は購買部門が協力会に発注するといった枠組みを明確にした。購買部門を強化して、かつ生産部門は徹底した自動化と省力化を追求して生産拠点をよりスリム化していく狙いだ。

日本でしか作れない製品を海外で販売する―。同社はかねてより国内生産をベースにして海外展開を図る考えを維持してきた。そうした中、2011年の東日本大震災では東北の生産拠点が被災。この工場では自動車向けのブレーキ部品を日本国内全体の半数超を生産していた。従業員らの想像をはるかに超える努力があったのだろう。震災発生後わずか1週間で工場は復旧した。しかし、こうした教訓から、サプライチェーンに影響を及ぼすようなシェアの高い重要保安部品をひとつの工場で生産するリスクを回避するために、国内工場のリスクヘッジとして海外拠点を開設した。この海外拠点では、現在、国内拠点で作る製品の一部を生産。製品は国内拠点に戻して供給するものがほとんどだが、今後はこの工場を起点に直接海外へ販売する製品も増やしていくという。リスクヘッジという役割に留まらず、この新たな拠点は、国内生産をベースにして海外展開を図るという同社の理想を実現するうえでも重要な足掛かりとなりそうだ。

ユーザーの多くが海外に進出している中で、自社は国内生産を維持しながら、さらに生産拠点はスリム化を進めるという取り組みは、層が厚く信頼関係も強固な協力会の存在がなければ難しいはずだ。筆者は毎年開催されている協力会の研修旅行を取材させてもらっているが、この協力会が単に元請け会社が抱えている下請け会社のグループという関係ではなく、簡単に言い表してみると「家族」のような温かささえ感じる独特の雰囲気に以前から興味を抱いていた。協力会本来の目的である「共存共栄」を体現しているわけだが、こうした温かな風が流れている協力会が、いくつもこの業界にあることを信じたい。

2016/06/29 金属産業新聞