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16年版「ものづくり白書」、新たな価値創造とIoT

政府は先ごろ数えて15版目となる2016年版「ものづくり白書」をまとめた。1999年に施行された「ものづくり基盤技術振興基本法」に基づき2002年版から刊行されている法定白書で、近年は経済産業省がものづくり産業の課題や展望について、厚生労働省が同産業の人材確保や育成について、文部科学省が同産業を支える教育や研究開発について、それぞれ報告している。

既に15年版の同白書で欧米企業によるIoT(モノのインターネット)を使った製造業の新しいビジネスモデルが紹介されており、今回の16年版では熟練技能の見える化やソリューション対応の営業スタイルなど、「ものづくり+(プラス)企業」と名付け一層の付加価値創出型企業への“変革”が促されている。

日本でも段取り替えなど所要時間の短縮、ユーザーや取引先を含めたトレーサビリティ管理、受発注情報分析とその対応など、生産工程や設計開発部門のスピードアップ・効率化にIoTを活用するケースは増えている。しかし、組織や業務全体の最適化といった観点や本来の利益を生み出す“仕掛け”作りの面での発想の転換、さらにはIoTを用いて「予知保全」といった新たな価値の創造も求めている。

即ち、現場発のカイゼンで成功してきた日本の企業文化からの脱皮を促し、モノを含めたサービス全てに新たな価値を提供していけるビジネスモデルの模索を提唱している。この一環として示されたのが「日本型スマート工場」で、かつて製造組立現場でも大量均一生産に伴う全自動化ブームから、多品種少量生産や短納期対応に伴いセル生産方式など人の柔軟性が見直されたように、“人と協調する(できる)IoT”が目指されていると指摘する。

このほか今回の同白書では、前記の通り厚生労働省や文部科学省の視点から、生産の国内回帰に対する労働供給面での課題や、女性の活躍に関する意識変化の分析についても言及されている。ただ中小企業にとって、もう少し判り易い視点での平易な分析や身近な先進モデルの具体例が示される必要はあろう。また“変革”を迫られているのは事業者ばかりでなく、従来“ハード寄り”とされてきた「ものづくり補助金」など政府による産業振興施策も、何らか見直されてしかるべきだ。

ともあれIoTに関しては本紙も前ねじの日特集号にて、センサー内蔵型ボルトや締付け・測定データの無線送信・一元管理といった最新ファスナー業界における事例を紹介した。これら最新の製品や技術が、今後日本だけでなく世界中の生産組立現場において活躍の場を広げていくことを願わずにはいられない。

2016/06/06 金属産業新聞