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遺産を新たな時代へ 変化する経営リスク

残念なことに首里城が焼けてしまった。かつての沖縄戦で灰となっていたものが、尽力により1992年に復元していた。2000年には首里城跡が世界遺産に登録され、内外にシンボルとしての威容を示していた。「心のよりどころ」の大切さは、無くなってより鮮明となる。

文化庁は4月、ノートルダム大聖堂の火災を受けて文化財の防火対策ガイドラインを定めた。ただ、首里城自体は文化財ではなく復元建物のためその対象とはなっていなかった。首里城は過去数度にわたり焼失し、その度に再建されてきた。沖縄では良質な木材が不足しがちなため、今回も資材調達からのスタートとなる。前回は台湾のヒノキ材が用いられたようである。

かねてから木材は火災が悩みのタネだ。加えて今回の場合、赤い塗装に沖縄独特の「桐油」を使っていたことが火の勢いを早めた可能性もあるという。近年では木材も進化し、難燃処理や耐火集成材の存在もあるが、当然こういった遺跡の領域では伝統的な工法であることに価値が置かれる。

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産を有している「八幡製鉄所」の名称が使われなくなるという。日本製鉄は1日、国内16拠点にある製鉄所の再編を発表。組織を6製鉄所に統合し、八幡製鉄所は「九州製鉄所の八幡地区」という位置づけになる見込みだ。再編により製造現場の自律性・効率性を高めて「つくる力」の再構築を目指す。業務の標準化やICTの進展等により遠隔地間を跨ぐ業務運営が可能となってきていることも背景にある。

八幡製鉄所は、明治34年(1901年)に官営製鉄所として操業を開始した。戦前は日本の鉄鋼生産量の過半を担う生産力を誇り、近代日本の礎を築いた。主要な生産品種は熱延鋼板、冷延鋼板、表面処理鋼板、ブリキ、電磁鋼板、棒鋼、線材、軌条、鋼管など。自動車工場向けの高級鋼板や、自動車・産業機械向け高級特殊鋼の棒鋼・線材の供給基地として、また近年は近接するアジア市場への輸出拠点としての役割を担っている。

現在の鉄鋼業界は原料価格の高騰や、鋼材価格の下落で厳しい環境が続いている。さらに、9月に発生した台風15号により日本製鉄ではガス処理に使う高さ約70bの煙突が強風で倒壊するなど、一部生産に支障が出ている。ねじ業界をはじめ製造業の多くは鉄鋼業界の動向に左右されるため、早期の復旧が望まれる。

「観測史上最大」の文句が頻発する今、従来の経営リスクに加えて、災害リスクを真剣に考慮する時代が来たようだ。良い気分はしないが、主要な取引先の場所をハザードマップで確認するべきかも知れない。

2019/11/11 金属産業新聞