ねじ(ボルト|ナット)・ばね(スプリング)の業界新聞。
金属産業新聞社

文字サイズの変更
ウェブ サイト内

時評

時評 > ねじ

事業環境の変化と所在地の変遷

時評子が取材等で出張の際、昨年本社事業所を移転した企業の社長に理由を聞いてみると「前々から手狭になってきたと思っていたが、自分の代までの事業ならこの場所で十分良かったが、後継者もおり若い従業員も入ってきたので、次の世代の為の環境づくり≠ニして、より広い事業所に移った。移転先選定に当たっては、取引や従業員の通勤も考慮して慣れた地元を離れるのは難しいので、近く(数`圏内)で従来の業務に差し支えないようにした」と説明いただいた。

また別の企業では創業の地に本社を残しているが、戦後の埋立地にある移転先の事業所が実質メイン(本社機能)≠ナあり、社長が云うには「創業の地は現在では一大住宅地だが戦前は工業地帯だった。高度経済成長期の東京(都としてではなく周辺の県を含む都市圏として)の拡大に伴いその地域が手狭になり、広い用地が確保された新しい埋立地へ自社のように多くの工業関連の業者は移転していった経緯がある」と話していた。

東京は時代を経て拡大している―、江戸時代から現在まで大火・震災・戦災を経ても、破壊された分以上に再建され成長している。

時代の変遷で地価の高騰や、近隣が住宅地ならば騒音・振動問題とそれにより24時間操業が出来ない事態。また、道路の混雑による仕入れ・出荷が難しくなる、長年事業を続けると自社の業務内容が昔と同じで変わらなくても、周辺環境の変化により、創業の地から引っ越し≠キる事はよくある。

都心で創業した企業ならば登記上だけや、本社機能及び来客対応用の応接室等に都心のアクセスが便利な点を活かせる事業所として残しながら、広い空間を必要とする工場や倉庫は郊外や湾岸の埋立地へ移転させて機能分担による効率化を図る事も多い。

例として東京鋲螺協同組合の組合員企業でも、現在の本社所在地が所属している支部の担当地域とは別の場所だと、当時その支部の地域内で創業や組合に加入した事が伺える。

一方、地方・郊外に支店・支社を持っていれば交通網の発達・物流の効率化により、「事業所からユーザーへ営業訪問する為の時間」の短縮、「ユーザーからの注文があったら〜日以内に届けられる範囲」の拡大により、1事業所当たりが担当している範囲も以前より広くなりつつある。

都市の拡大や通信・交通の発達に合わせ業務の効率を図りながら、より良い事業環境を求めての引っ越し、事業所毎に地域や担当分野で分業を進める―、所在地の変遷は、その企業だけでなく事業環境を知る手掛かりとなる。時には事業所所在地から、創業時や往年の時代背景を振り返るのも必要だろう。

2017/03/20 金属産業新聞